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紀州備長炭の作り方

 

1.山での作業

  

 (1)原木の手当

  まず何といっても原木の手当が必要です。ウバメガシの山を買わねばなりません。買うといっても山をそのまま買うわけではなく山に生えているウバメガシ自体を山主さんから売ってもらうのです。通常は年限を区切ってその間で山に入りウバメガシを伐り出す契約をします。例えば一町の山を2年の年限でいくらで買うか、という具合です。ウバメガシの生えている山を探すこと、所有者が誰か、境界線はどこからどこまでか、この山で一体何窯分焼けるのか、木の出し(搬出)は良いか、車は入れるか・・・・等々山を買うことは容易ではありません。もちろん纏まった金額が必要となりますし地公体への伐採申請なども必要です。最近では、原木は木こりさんから買って、窯で焼くだけの炭焼きさんも多くいます。

 (2)原木の伐採・搬出

  山の状況で設置する機械類も様々ですが、集材機を設置して線(架線)を張り遠く離れた伐採箇所からウバメガシを搬出する等少人数で効率よく山仕事ができるように皆工夫しています。ウバメガシの山は急峻で滑り落ちるような危ないところが多く、足場も定まらないようなところでチェーンソーを操りながら窯に入るサイズにウバメガシを伐採していくという非常に過酷で危険な重労働です。伐りだしたウバメガシはトラックに載せ窯場まで運搬します。雑木も口焚きの時などに必要となるため別途伐採が必要となります。

2.窯での作業

 

 (1)木ごしらえ

    山から運んできたウバメガシを窯に入れる前にする作業を「木ごしらえ」と呼んでいます。太い原木(Φ10cm程度以上)は「割機」で半分や1/4等に割っていきます。またウバメガシは曲がったものが多いので切目を入れて楔を打ち込み真っ直ぐにします。細い原木は束にそろえて、「木くべ」の時に順番よく窯に入れられるよう窯横に原木を並べて準備しておきます。

 (2)木くべ

      「木ごしらえ」した原木を窯の中に入れていく作業。「窯出し」した後それ程時間がたたないうちに(窯が冷めないうちに)木をくべる方がいい炭になるうえ「口焚き」にも多くの雑木を燃やさずに済む訳で、窯のサイズが小さかった昔は「立て又」という道具を使って窯口の外側から原木を窯の中に立てかけて入れていました。現在でも20-25表程度の小さい窯の炭焼きは「立て又」でくべている人がいます。40俵ほどの大型の窯の場合は窯内部に直接木を持って入ってくべます。したがってある程度窯を冷ましてから入ることになるのですがそれでも足裏や耳たぶ等が焼けてくるほど熱い中での作業となります。原木は伐ったばかりの水分を多く含んだ状態で重く、根元を天井側に逆さまの状態で縦くべします。狭い窯口から腰を屈め熱い内部に重いウバメを入れていく作業はこれまた大変な重労働です。

 (3)口焚き

  窯口の上部は木をくべた後、レンガ・石と土・素灰などで閉じてしまい下部にホームベースを逆さにしたような焚き口を作っておきます。この焚き口で雑木などを燃やしていく作業が「口焚き」。くべたウバメガシは生木でなければならないので「口焚き」で窯内の温度を上げ徐々にウバメの水分を抜いていきます。「木くべ」の際焚き口の手前最後の1-2列はウバメ以外の雑木で太いものを並べて直接ウバメが燃えていかない様に燃え代を作っておきます。数日間「口焚き」をしていくと最初は水分を含んだ白い煙がどんどん出ていき、それが徐々に青味がかった色に変っていきます。鼻を突くような酸っぱい匂いに変わっていくとそろそろ炭化がはじまる合図です。炭焼きはこの時点のことを「つく」と言います。「ついた」かどうかは煙の色と匂いで判断します。

 

 (4)炭化

  「窯に火がつく」=炭化が始まるということで焚き口を閉じてしまい蒸し焼き状態にします。完全に密封するのではなく窯の前方部、窯口の上部や下部にほんの少し穴をあけて最低限の空気を送り込むように調節します。窯の後方部、排煙口も適宜穴の大きさを調節したりします。「ついて」しまうと後は窯が勝手にどんどん炭に仕上げていってくれます。内部ではまず初めにウバメの上の部分(天井近く)から「ついて」下にさがっていきます。炭化にかかる一週間程度の間に次の窯の木の準備(山での作業や木ごしらえ)をこなすのが炭焼きのサイクルとなります。またこの間に排煙口から出る煙を冷まして集めると紀州備長炭木酢液の粗木酢が採れることになります。

 【炭化温度と炭化時間】一般に「白炭は高温で黒炭は低温」と思われていますが、備長炭の炭化温度は200-300度で黒炭の350-400度と比較して低いのです。また炭化時間も備長炭の方が数日は長くかかります。これは原木のウバメガシという木が非常に堅いにもかかわらず熱分解がしやすく、高い温度で炭化すると激しく熱分解されることで、炭材が折れたり崩れたりしてしまう為、なるべくゆっくりと熱分解が進むように窯の構造(備長窯)が工夫されているのです。「1000度以上の高温で焼いた備長炭」というよく聞く文句はこの後の「ネラシ」から「窯出し」の工程で実現されます。

 (5)ネラシ(アラシ)

  炭化の最終段階で煙の色が澄みとおった青色から無色近くなって行くといよいよ「ネラシ(アラシ)」です。焚き口を徐々に開けていき空気を送り込みます。この時もじっくりと時間をかけて(半日から丸一日程度)やらねば炭が傷みます。空気を送り込まれた窯内部の炭は薄暗い赤が徐々に強くなりやがて最終段階で金色になるまで温度が上がっていきます。この急激な温度上昇は窯内にたまっているガスとウバメガシの樹皮が燃焼エネルギーとなり、紀州備長炭を紀州備長炭たらしめる為、きわめて純度の高い炭素の塊へと仕上げていく重要な工程なのです。

 

 (6)窯出し

  夜中も1時間ごとに起きては「ネラシ(アラシ)」をかけ、窯口からゴーゴーと炎が上がりだした状態ですでに温度は1000度以上になっていると思われます。上手く焼けた備長炭は縦詰めした原木がそのままの状態で奥方向にもたれ込みながらもしっかりと立っています。寝不足でふらふらのまま、前列から順に金色に光っていく備長炭をその分だけ「エブリ」という道具で掻き出していきます。「チャリーン!」「カキーン!」という金属音とともに生まれ出てきた備長炭に素灰(土と灰を混ぜたもの)をかけて急速消火します。この「窯出し」に長い場合は12時間以上かかることも。熱さも半端ではなく体力は限界に近づきます。

 (7)灰出し・選別・箱詰め

  1-2日後、素灰の中に埋もれた備長炭を掻きだして灰まみれの中で一本一本手に取りながら焼き上がりを確認しつつ紀州備長炭の規格に沿って選別をしていきます。長いものは鉈で適宜カットしながら紀州備長炭の箱に詰めていき、漸くこれで一窯分の終了を迎えるわけです。

紀州備長炭の製炭工程概略図